退職代行 引き継ぎ~引き継ぎしないで辞めたい! 有給休暇の消化は?損害賠償請求されないか?

引き継ぎ
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・今すぐ会社を辞めたいが、引き継ぎが終わるまで退職できないのか?
・退職代行を使えば、引き継ぎなしで辞められるのか?

・引き継ぎしないで退職したら、会社から損害賠償を請求されないか?
・退職日までに年次有給休暇を使い切ると、引き継ぎのための出社日がなくなるが、大丈夫か?

・本記事では、退職代行を使った場合の引き継ぎの疑問にお答えし、安心して退職できるように解説しています。
・あわせて円満退職のための引き継ぎ手順も説明します。

この記事は、司法書士として長年各種業界と関わり、社会保険労務士合格者である筆者が、労働法や社会保険などの知識を活かして、引き継ぎの問題点を解説しています。

この記事を読んでいただければ、引き継ぎをめぐる様々な疑問が解消し、スムーズな退職が実現できると思います。

目次

Ⅰ 労働者には「退職の自由」がある

「こんな会社、今すぐ辞めたい!」と思った時、まず頭に浮ぶのは「では、引き継ぎはどうするか?」という点でしょう。
「退職代行」を使ってもいいから、会社の人と顔を合わさず今すぐ辞めたい、と考えた時でも、「引き継ぎ」の問題は気になるものです。

今の自分の業務が大した引き継ぎもいらないものならサッサと辞めればよいのですが、そうでない場合はどうでしょうか?

結論からいいますと、労働者には「退職の自由」が認められています。したがって、労働者が退職の意思表示をしている以上、引き継ぎをしないことを理由に退職させないという対応は原則としてできないことになります。

民法によれば、期間の定めのない雇用(正社員)は、いつでも解約の申し入れ(退職の申し入れ)ができ、この場合、雇用は、解約申し入れから2週間経過することによって終了するとされています(民法627条)。 

仮に会社の就業規則に、「退職の申し出は、退職の1か月前までに行わなければならない」と定められていたとしても、民法の規定が優先され、2週間経過後は当然に労働契約は解約される(退職できる)のです(高野メリヤス事件の判決)。

また、憲法では、労働者には「職業選択の自由」の一種として「退職の自由」が保障されており(憲法22条1項)、さらに、労働基準法では、「強制労働の禁止」が定められていて、使用者は労働者の意思に反して強制的に労働させてはならないとされているのです(労働基準法5条)。

つまり、自由に退職できないとなると、次の「職業の選択」も自由にすることができないので、憲法違反になるのです。さらに、労働者がしたくないと思う仕事を辞めさせずに無理やりやらせることも、「強制労働」にあたるのです。
 
このように見ると、労働者が退職の意思を表示しているにもかかわらず、「引き継ぎ」しないことを理由に退職させないことは、原則として会社側の違法行為にあたります。

Ⅱ 引き継しないことが問題になるケース

引き継ぎについては、法令のどこにもそれに関する規定がないので、上記のとおり、引き継ぎしないことを理由に退職を妨害することはできないのが原則です。
しかし、例外的に引き継ぎしないことが問題に発展するケースもありますので、それらについて見ておきましょう。

⑴ 引き継ぎが業務内容になっている場合

退職するまでの間、労働者には、会社から命じられた業務として「引き継ぎ」をする義務があります。つまり、会社が「引き継ぎをしてくれ」と言う以上、引き継ぎすることは業務命令の一つとしてそれに従うことは労働者の義務になります。

このことを、会社が就業規則に定めている場合も多いのです。

たとえば、就業規則に「従業員は、退職前に業務の引き継ぎを速やかに完了させなければならない」と定めているような場合です。そして、さらにつけ加えて、
「引き継ぎをしない場合は、退職金を支払わないか減額する」とか「引き継ぎをきちんとしない場合は懲戒解雇とする」などと定めるケースもあります。

退職金については、法律に規定がないので、会社の自由な取り扱いに任されていますし、懲戒解雇についても、その効力を争うにしても、次の転職との関係で厄介なことになりかねません。

ですから、原則としては、労働者に「退職の自由」があるので会社は退職妨害できませんが、就業規則も労働者を拘束する重要な規範ですので、それが法令に反しない限り、有効に働くのです。

ここは難しいところですが、労働者としても、退職金などで不利になることを避けるとともに、できるだけ常識ある行動をして、落ち度や失点を追及されないようにして、可能な義務は果たすようにされたいと思います。

こういう会社の場合、交渉力のあるしっかりした退職代行を使えば、代行業者が会社と話し合いや交渉を通じて、穏便な形で本人に有利なように、引き継ぎや退職の問題を解決してくれるはずです。

もちろん、ひどいパワハラや過酷な長時間労働、また、すでにうつや適応障害など心身の不調を発症しているという場合には、引き継ぎしなくても、そこに正当理由があると認められるので、即刻、「退職の自由」を使って辞めるべきでしょう。
そういう場合も、退職代行は会社側を説得してくれるので、おおいに役立つはずです。

⑵ 損害賠償請求される場合も

上に述べたことと関連して、引き継ぎをしないことが原因となって会社に重大な損害を与えた場合、会社が損害賠償を請求するケースもあります。

会社が引き継ぎを求めたのに、正当な理由もないのに応じないで、会社に損害を与えた場合
引き継ぎしないことによって、業務に著しい支障をきたした場合
引き継ぎをしないことによって、取引先を失うなど会社に損害を与えた場合
緊急性がある案件を正当な理由もなく引き継ぎをしなかったため、会社に損害を与えた場合
などです。

しかし、現実に会社側が損害賠償請求するためには、引き継ぎ義務の不履行と損害との間の因果関係などの証明が難しく、簡単ではありません。

しかし、社員としても、やはり会社側の事情をあまりに無視した非常識な行動はとるべきではないでしょう。

もし、このような問題が生じた場合には一社員での対応が難しくなるので、将来こういう事態が予測されるときは、あらかじめ弁護士による退職代行サービスに相談したり、弁護士の退職代行に依頼するとよいと思います。

⑶ 退職代行業者の権限の範囲

ここで、退職代行サービスに依頼する場合、業者ができる法的権限の範囲を確認しておきましょう。

①弁護士(法律事務所)による退職代行・・・退職に関するあらゆる法律問題に対応できる
②労働組合による退職代行・・・団体交渉権があるので、労働者の労働条件や権利について会社側と交渉できる
③弁護士が顧問や監修する一般業者の退職代行・・・弁護士の指導や助言を受けるので適切な退職代行を期待できるが、自分自身では会社との交渉権はない

退職にあたって引き継ぎの問題が起こり得る場合、その権限から見て、①の弁護士または②の労働組合の代行業者を使うべきでしょう。③の業者では会社との交渉権がないからです。
さらに引き継ぎについて退職金懲戒解雇損害賠償がからむケースは、法律問題を専門に扱える弁護士の業者に依頼するのがよいでしょう。

Ⅲ 有給休暇を使って辞めると引き継ぎができない場合


退職前に、年次有給休暇を使い切って辞めたいという方も多くいます。
前述したとおり、労働者は期間の定めのない雇用契約の場合、退職申し入れの日から2週間を経過すれば、退職できるのです。

そこで、その2週間のうち休日を除いて、年次有給休暇がたとえば10日分残っていてそれを全部使えば、退職申し出日以降、全く出社せずに退職することもできるのです(もし、有休が10日分に足りない場合は、足りない日だけ出社することになります) 

この場合、会社から引き継ぎのために出社するよう業務命令が出たとしても、従う必要はありません。年次有給休暇は労働基準法が認める労働者の権利だからです。

この点については、会社には、労働者が指定した時季に有休休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に変更する権利があります(時季変更権)。
しかし、現実にはもう辞める人間に有休を付与できるような他の時季というものは存在しません。よって、引き継ぎさせるための会社の時季変更権は、結局行使できないことになるのです。

したがって、労働者としては、先に見たように、引き継ぎしないことによって会社に特別な損害を与える恐れさえなければ、有休を使って堂々と辞めればよいのです。
この有給休暇についても、退職代行に頼めば、会社と交渉してくれてスムーズに消化できることでしょう。

Ⅳ 円満退職のため引き継ぎの手順


最後に、スムーズな引き継ぎをして会社を円満退職する場合の手順についても、簡単に見ておきましょう。

1「引継ぎスケジュール」を考える
2 業務の要領や手順を「引継ぎノート」にまとめるとよい
3 必要に応じて後任者や上司と取引先へあいさつに伺う

・退職日までに引継ぎを終わらせるため、自分なりの「引継ぎスケジュール」を作成するとよいでしょう。
スケジュールに基づいて引き継ぎ手続を進めればすむからです。

・引継ぎは、後任者に仕事内容を具体的に教えるほか、業務の目的や流れ・手順などの必要事項を「引継ぎノート」にまとめて後任者に渡せば、後任者が理解しやすく仕事もしやすくなるでしょう。その際、関係先リストその他の必要なリストも併せてのせておくとよいでしょう。

・また、営業職などの場合、取引先によっては、後任の担当者や上司などとともにあいさつに伺い、自分が辞めた後も業務が滞りなく進むことを説明し、安心させるようにするとよりよいでしょう。

・円満退職する場合の流れは一応このようになりますが、退職代行を使って辞める場合は、代行業者と打合せの段階で、もし可能なら「引き継ぎノート」やメモみたいなものを渡しておくのも、よりスムーズに事を運ぶのに役立つでしょう。
もちろん、それもしたくない場合は、すべて代行業者に任せておけばよいでしょう。代行業者が話し合いで会社が納得するように持って行ってくれるでしょう。 

Ⅴ まとめ ~退職代行の利用も有効


時間をかけてでも、会社を円満退職するのが望ましいことは言うまでもありません。
しかし、現実には、今の会社が長時間労働を強いる酷いブラック企業だったり、会社側が強引な退職妨害をしてきたり、こちら側がうつや適応障害などの心身障害ですでに参ってしまっている状態にあるなど、速やかに退職したほうがよいケースが少なくありません。

そんな場合は、もはや猶予の余地はないので、憲法や労基法に裏付けられた労働者の権利、「退職の自由」を使って、断固として素早く退職を実現するようにしましょう。退職代行がやってくれるはずです。 

引き継ぎについては、今の自分の仕事がとくに引き継ぎを要しない仕事である場合があるし、仕事内容を先輩や同僚がよく分かっていて自分が辞めてもとくに問題ない場合もあるし、また、会社に仕事上のマニュアルなどがあって、それを見れば他の人が問題なく仕事を進められるケースもあると思います。

そうでない場合で、引き継ぎが必要なケースであっても、こちら側に「正当な理由」があれば、引き継ぎ義務不履行の責任を問われることはないでしょう。「正当な理由」とは、本人の健康上の理由やパワハラを受けて辞めるなどの場合です。

通常は、引き継ぎしないことによって現実に会社に重大な損害を与えるなど、よほどのことがない限り責任を問われて損害賠償が認められるというケースは少ないでしょう。

ただ、今後引き継ぎが原因で複雑な法律問題になりそうな場合や、予めトラブルを避けたい場合などは、弁護士などの専門家による「退職代行」を予め頼んでおくのもよい方法といえます。

また、退職代行の利用は、引き継ぎのことも含めて、もう会社とやり取りしたくないサッサと会社を辞めてしまいたいと考える人にとって、よりスムーズにストレス少なく、退職を実現できるというメリットもあります。

退職代行の利用には多少費用がかかりますが、人によっては費用以上の大きな効果が期待できるのではないかと思います。
 

最後に、おすすめできる退職代行サービス」の記事を紹介しておきますので、ご検討される方は参考にしていただければと思います。

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