退職の流れと手続 ~退職理由、休職、退職届、引き継ぎ、社会保険、退職金、退職代行などを解説

退職願
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あなたが退職を決心した場合、実際の退職手続について不安なことはありませんか?
実際に退職するときの流れは、どのようなものでしょうか?

この記事では、退職を決めてからの具体的な手続きの進め方転職活動との関係会社への退職意思の伝え方仕事の引き継ぎ、社会保険や税金の手続退職金の問題強引な退職妨害にあったときの対応退職代行など、スムーズな退職に向けた手順を解説しています。

本記事は、司法書士として長年各種業界と関わり、社会保険労務士合格者である筆者が、労働法や社会保険などの専門知識を活かして、退職のノウハウを解説しています。

本記事を参考にしていただければ、必ず退職手続をスムーズに進められることと思います。

目次

Ⅰ 仕事を辞めたいと考える時とその理由

⑴ 「仕事がつらい」、「上司や同僚とうまくいかない」、「給料が安い」など、今の仕事がいやになり退職したいと考えることは、誰にでもあることです。

でも、仕事を辞める決意をし、退職に向けて現実に行動を起こす前に、もう一度ご自分の辞める理由を再確認されることをおすすめします。

ご自分が今かかえている問題や悩みは、本当に退職することでしか解決できないものでしょうか

辞めようと思うときは、自分が感情的になっていることも多いものです。冷静になって、今一度退職しなくてもすむ方法は本当にないのか、考えてみるのもよいのではないでしょうか。

退職して転職したとしても、給与面や待遇、労働の環境が今より良くなるという保証はないのです。また、再就職するまでの期間、収入が得られず、不安定になることも多いはずです。転職先を決めてから退職するというのが一般的かと思いますが、その辺の準備も、退職にあたっては必要となるので大変です。

仕事を辞めなくてすむ方法として考えられるのは、社内で上司に相談したり、退職の経験のある友人や知人に相談したり、人事に相談したりして、解決の道を探ってみるのも一つの方法かと思います。
また、一番親身になってくれる家族にも相談してみましょう。

退職したい理由がおもに仕事内容の場合は、人事に頼んで、仕事の内容を変えてもらったり、担当職務を変えてもらったり、他の部署に異動させてもらったりするなど、できるかもしれません。

ただ、その他の退職理由である、職場の人間関係に耐えられないから、給与が低いから、会社の将来に不安があるからなどの理由の場合は、解決が難しい面もあるかと思いますが・・・。

なお、人間関係の悩みなどの場合は、他者への相談や専門家のカウンセリングを受けるなどによって改善する場合があるかもしれません。

 ちなみに、多くの人はどんな理由で退職しているかについて、厚生労働省の統計がありますので、ここで参考までに掲載しておきます。

◆ 男性の場合

1位 定年退職
2位 労働時間・休日などの労働条件
3位 職場の人間関係
4位 給料の低さ

◆ 女性の場合

1位 職場の人間関係
2位 労働時間・休日などの労働条件
3位 能力・個性・資格が活かせない
4位 給料の低さ

(厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」参照)

このようにして、退職について再確認したうえで、ご自分の気持が退職に固まった場合は、スムーズな退職に向けていよいよ進むことになります。

Ⅱ 転職活動は仕事を辞めてからか、在職中か?

退職と転職は、セットで考えられることが多いと思います。

中にはとりあえず今の仕事を辞めて、後でゆっくり身の振り方を考えるという方もおられるでしょうが、生活の問題があるので、多くは次の仕事を探すことになると思います。

その場合、在職中に転職活動をして、転職先が決まった時点で退職を現職場に申し出るのか、それとも、いったん退職した後でじっくり転職活動を始めるのか、2つのスタイルがあります。

ここで、それぞれのメリットとデメリットを比較しておきましょう。

1 今の仕事を辞めてから転職活動をする場合

【メリット】

  • 時間をかけて応募先の情報収集や資料集めができる
  • 生活の中で求職活動を最優先でき、複数の面接要請にも対応しやすい
  • これまでの自分の経歴を見直し、活躍できる企業をじっくり選んだり検討したりできる
  • 新たな資格やスキルを身に着けるための講座受講も可能
  • 手続をすれば、失業手当や早期再就職支援金などを受けられる

【デメリット】

  • 退職により収入がなくなるので、当面の生活費の準備が必要(最低でも3か月分は必要と思われる)
  • 転職活動がうまくいかないと、就職先への希望条件を落としがち
  • 不採用になったときのストレスやショックが大きい
  • 転職活動が長引くと、あせって精神不安定になったり、意欲の減退を招きかねない

2 辞めずに転職活動する場合

【メリット】

  • 転職が決まってから退職するので、ブランクがなく、収入もとぎれないので、精神的に楽
  • あせらないので、自分の希望条件に合う企業をじっくり探すことができる
  • 転職先を決めてから退職を申し出るので、現在の会社から慰留されても断りやすい
  • 転職に伴う税金や年金、社会保険などの諸手続を自分でする必要がない

【デメリット】 

  • 現職の多忙な業務に追われると、転職活動の時間が十分に取れず、なかなか転職できないこともある
  • 情報収集の時間が限られ、不十分な情報で活動することもある
  • 面接対応する時間を調整するのが大変
  • 応募先が急ぎの求人の場合、退職との関係で相手方が望む早期入社ができず、不利になることもある
  • とくに転職に有利なスキルがなく、それを着けたいと思っても、その修得にかける時間がない
  • 現職の短期間での引継ぎや新規の入社手続など、時間が少ない中で行動するので、気苦労も多くなる

3 どちらを選ぶべきか

ご自分の今の状況が、たとえば、「先に退職して無収入になるのは生活上困る」「会社の寮に住んでいるので、先に仕事を辞めれない」などの人は、現職のままで転職活動することになるでしょう。

しかし、今の業務が忙しくて、とてもまともな転職活動ができそうにないなどの事情がある人は、ご自分の経済面や生活状態を考慮しながら、先に辞めるのも一つの選択肢かと思います。

この辺は、できるだけ失業を避けつつもご自分の会社を辞めたい気持や転職への希望の強さなどを比較しながら、慎重に判断していただきたいと思います。

Ⅲ 休職と傷病手当金の受給

1 休職制度

業務外の事由でケガをしたり病気になって仕事ができなくなった場合、退職を考える方がいます。
しかし、このような場合でも、必ずしも会社を辞めなくても休職制度を使うという選択肢もあります。 

休職制度とは、従業員について仕事に従事することが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対して、労働契約はそのままで、仕事に就くことを免除または禁止することをいいます。

この「休職」については法律に規定がないので、従業員の当然の権利としては認められてはいません。
会社が、必要の都度、休職命令として、これを発するという形になります。
ただし、会社が休職命令を発するためには、労働協約や就業規則の定めが必要です。

最近は、うつ病などの精神疾患による長期休職者が増える傾向があり、その場合、休職期間満了時の従業員の待遇をどうするかをめぐってトラブルになるケースが増加しています。

病気やケガによる休職の場合は、休職期間中に傷病が治れば「復職」となりますが、治らずに休職期間が満了すれば自然退職または解雇となります。

ただし、この点について裁判例では、休職期間満了時にまだ従前の業務に復帰できる状態でなくても、より簡易な業務なら就ける場合で、かつ本人がそれを希望する場合は、会社は可能な限り軽減した業務に就かせる義務がある、としています。
労働者を保護する方向へ判例、学説は動いているのですね。

2 傷病手当金 


会社に在籍しながら休職する場合でその期間中給料が出ない場合には、健康保険から「傷病手当金」の支給を受けることができます。

傷病手当金は、被保険者が病気やケガのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。 ただし、休んだ期間について事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合には、傷病手当金は支給されません。

 傷病手当金の支給要件をまとめると、

 業務外の事由による病気やケガで療養していること

注)業務中の疾病やケガの場合は「労災保険」が適用されます。
・業務外か業務中かの違いがあるので、傷病手当金と労災保険の両方が受け取れることはありません。

 労務不能・・医師の判断が必要 

 連続する3日(待期期間という)を含む4日以上就労できないこと

 休んだ期間中の給与の支払いがないか、傷病手当金より少ない給与しか支払われないこと

以上が傷病手当金が支給される要件です。 


 傷病手当金の支給額

傷病手当金として支給される金額は、 

支給金額 ➡1日当たりの金額:【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×2/3
(支給開始日とは、一番最初に傷病手当金が支給された日のこと)なお、支給開始日の以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算します。

ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
イ 標準報酬月額の平均額


なお、業務上の事由による傷病で労災保険から休業補償給付が受けている人は、同じ傷病で併せて傷病手当金を受けることはできませんので、注意して下さい。

以上、退職前に「休職」を検討される方は参考にして下さい。 

傷病手当金の詳細についてはこちらへ傷病手当金

Ⅳ 会社に退職の意思を伝える

転職活動のために先に会社を辞める場合でも、また、転職先が決まってから会社を辞める場合でも、いずれにせよ自分の決断として会社を辞める決意をしたときは、退職を会社に伝えなければなりません。

退職手続は、次の手順で進めるとよいでしょう。

1 まず、就業規則を調べる

期間の定めのない雇用の場合(正社員)は、いつでも解約の申し入れ(退職の申し入れ)ができます。この場合、雇用は、解約申し入れから2週間経過することによって終了します(民法627条)。 

ただし、会社の就業規則にこれとは異なる定めがされていることも多いので、必ず確認しておきましょう。

就業規則に仮に、「退職の申し出は退職の1か月前までに行わなければならない」と定められていたとしたら、1か月以上前に、直属の上司に退職したい意思を伝え、退職日を決めたうえで退職願を直属の上司に提出するとよいでしょう。

ただ、本人が少しでも早く辞めたいと思って、就業規則の規定を守らず、2週間前に退職届を提出した場合は、どうなるでしょうか?

裁判例では、このような場合、民法の2週間の規定が優先され、2週間経過後は当然に労働契約は解約される(退職できる)と判断されています(高野メリヤス事件)。

もちろん、円満退職するためには、就業規則は遵守するほうが望ましいので、会社側の強引な退職妨害などがない限り、会社に配慮して退職時期は余裕を持って決めたいものです。

また、会社の繁忙期の退職を避けるなどの配慮も、可能ならばするとよいでしょう。

もちろん、こちら側の辞めたい理由が、適応障害など心身の疾患の場合や、会社がブラック企業のため過酷な労働にもはや耐えられない場合とか、ひどいパワハラでメンタルをやられてしまったとかの場合は、急を要するので、他によい解決方法がなければ、即刻退職すべきでしょう。

2 文書で退職意思を伝える

退職は口頭で伝えることもできますが、後日のトラブルを避けるためには、文書(退職届または退職願)で行い、証拠を残しておくべきでしょう。あとで、言った言わないでもめることもあるからです。

その場合でも、まず、口頭で直属の上司に退職意思を伝えてから、退職日を決めて退職届や退職願を提出するようにしましょう。突然、予期していない退職届や退職願を出されると、相手が戸惑い不快感を抱くことも考えられるからです。

3 退職届と退職願の違い

退職願は、退職することについて会社に退職の申し込みし、その判断を仰ぐという意味があり、会社がその申し込みを承諾した時に退職の効力が生じます。したがって、会社が退職を承諾するまでの間はいつでも撤回することができるのです。

一方、退職届は、退職の意思決定をしたことを会社に届けるということであり、それが会社に到達した時点で退職の効力が生じます。したがって、退職届では、詐欺や脅迫などによって提出したという特殊な場合を除いて、一度提出したらその撤回はできないとされます。両者の違いに注意して下さい。

なお、自己都合で円満退職を心がける場合には、退職日を上司と相談して決め、通常は退職届ではなく、会社の了解を得る形の「退職願」にするほうがよいでしょう。

4「退職願」の書き方

退職願の書き方は、B5の白地の用紙に黒または紺の万年筆やボールペンで書きます。書けたら封筒に入れて、封筒の表には「退職願」と記入します。

 退職願の記載内容としては、

・冒頭に「退職願」と書きます。
・退職理由は、「一身上の都合により」として、具体的な理由は書かないようにします。
・あて名は社長宛にします。ただし、提出は直属の上司にします。

「退職願」の見本

退職願

5「退職届」の書き方

退職届の書き方は、B5の白地の用紙に黒または紺の万年筆やボールペンで書きます。書けたら封筒に入れて、封筒の表には「退職届」と記入します。

 退職届の記載内容としては、

・冒頭に「退職届」と書きます。
・退職理由は、「一身上の都合により」として、具体的な理由は書かないようにします。
・あて名は社長宛にします。ただし、提出は直属の上司にします。

「退職届」の見本

退職届

6 退職意思は直属の上司に伝える

退職の意思は、直属の上司に伝えます。

たとえ直属の上司との関係がうまくいっていなかったとしても、別の上司や人事部に直接提出するのはよくありません。直属の上司が不快感を持ち、以後の退職手続がうまくいかなくなることもありうるからです。また、今の会社を辞めてからも、どこでこの上司との関わりがあるかもしれないからです。とくに転職先が同業種の場合はとくにそうです。

また、同僚や先輩社員たちには、たとえ親しくても、当面は退職を明かさないほうがよいでしょう。なぜなら、社員の去就は、本来会社の機密事項だからです。

7 会社の引き留めを避けるために退職意思はきっぱりと

退職意思を伝えるときは、あやふやな態度でなく、きっぱりと伝えるようにしましょう。会社の事情にもよりますが、人手不足で今辞められたら困るとか、後任者が決まるまで待ってくれとか、いろいろな理由を出して、強引な引き留めにあうことも考えられるからです。
ですから、こちらの退職意思が固いことを相手の分からせる必要があるのです。もちろん、こちらとしても、会社のために協力できるところはするべきですが、すでに決めた退職意思を変える必要は全くありません。

こちらが法令や就業規則に基づき退職願を出している以上、毅然とした態度で会社側の慰留を断ればよいのです。

8 退職理由はネガティブな表現を避ける

退職理由の内容は、あまりネガティブな表現は使わないようにしましょう。

たとえば、辞める理由が「上司とうまくいかないから」とか、「給料が安いから」とか、「仕事が自分に合わないから」とか、「労働時間が長すぎるから」とか。

そういうことを言っても、どうせ辞める人間が言うことだからと無視されがちだし、逆に、改善するからとか、希望の部署に異動させるとか言って、退職の引き留め材料に使われたりすることがあるからです。

できるだけ否定的でない前向きで個人的な理由で、ある程度事実に基づくものを考えるとよいでしょう。

たとえば、「現在の仕事と違う分野に挑戦してみたい」とか、「〇〇の病気なので治療に専念したい」とか「家庭の事情(親の介護、家業を手伝うなど)」その他、相手が納得しそうな理由を伝えるようにしましょう。

このようにキチンと退職を申し出ても、強引な引き留めにあってなかなか辞められない場合については、後の「Ⅷ章」でくわしく取り上げますので、参考にして下さい。

Ⅴ 仕事の引き継ぎ

  • 仕事の引き継ぎについては、 
  • 「引継ぎスケジュール」を考える
  • 業務の要領や手順を「引継ぎノート」にまとめる
  • 必要に応じて後任者や上司と取引先へあいさつに伺う
    このような手順で引き継ぎ手続を行えば、スムーズに退職することができるでしょう。

退職日までに引継ぎを終わらせるため、まず、自分なりの「引継ぎスケジュールを作成するのもよいことです。それに基づいて引き継ぎの手続を進めればいいからです。


引継ぎは、後任者に仕事内容を具体的に教えるほか、業務の目的や流れ・手順などの必要事項を「引継ぎノート」にまとめて後任者に渡せば、後任者が理解しやすく仕事もしやすくなるでしょう。その際、関係先リストその他の必要なリストも併せてのせておくとよいでしょう。

また、営業職などの場合、取引先によっては、後任の担当者や上司などとともにあいさつに伺い、自分が辞めた後も業務が滞りなく進むことを説明し、安心させるようにしましょう。

引き継ぎの詳しい内容はこちらの記事を参照下さい 引き継ぎしないと退職できないか?

Ⅵ 社会保険・税金・雇用保険の手続

健康保険や厚生年金、雇用保険、労災保険などの社会保険は、職場を通じて加入する仕組みです。
また、所得税や住民税も、職場が給与から天引きして一括納付することになっています。

したがって、職場を変わる際はそれらに関する手続をしなければなりません。

1 健康保険、厚生年金、雇用保険

【健康保険・厚生年金】

在職中の健康保険料、厚生年金保険料は、企業が半額負担し、本人も半額負担してきましたが、退職すると企業の半額負担がなくなります。

この場合、健康保険については、任意継続することができますが、そのときの保険料は全額自己負担となります。この任意継続をするためには、資格喪失日から20日以内に申し出るなどの要件があります。

  • 健康保険、厚生年金保険の資格喪失日は、退職日の翌日です(末日退職の場合は、翌月1日)。
  • 退職後すぐ転職する場合は、転職先で健康保険、厚生年金保険の資格取得の手続をします。
  • 転職先がまだ決まっていない場合は、居住地の市区町村で、国民健康保険、国民年金の加入手続きを行います。
    健康保険に入っていないと、その間医療機関の診療費が全額自己負担(10割)になるので、注意してください。

【雇用保険】

雇用保険は、労働者の生活と雇用の安定をはかり、その就職を促進することなどを目的とした保険です。

保険料は、企業と本人が負担します。雇用保険では企業負担が本人より多くなっています。

  • 退職時には、勤務先から「雇用保険被保険者証」を受け取りますが、転職先がまだ決まっていない場合は、さらに「離職票」も受け取ります。
  • 転職先が決まっている場合は、転職先に雇用保険被保険者証を提出します。
  • 雇用保険の保険料を在職中に一定期間支払っていると、退職後すぐに転職先が決まらない場合、失業給付を受けることができます。
  • ただし、失業給付を受けるためには、①就職しようとする積極的な意思と②労働できる能力が必要であり、病気やケガのためにすぐには就職できない場合は、給付が受けられないことになります。
  • なお、失業給付は、退職理由によって給付される時期などが次のように異なります。

     会社都合(倒産、解雇など)による退職では、申請手続き後7日間の待機期間の後給付が受けられる
     自己都合による退職
    では、申請手続き後7日間の待期期間+給付制限期間2か月(原則)の後に給付が受けられる
  • 失業給付を受ける手続は、公共職業安定所(ハローワーク)に、次の書類を持参し、そこにある離職票、失業給付申請書に必要事項を記入して提出します。

    持参する書類

    ・雇用保険被保険者証
    ・離職票
    ・身分証明書(免許証など)
    ・銀行口座のわかるもの
    ・印鑑

2 税金

【所得税】

退職してその年の12月までに転職する場合
は、退職時に受け取った源泉徴収票を転職先の会社に提出します。そうして転職先で年末調整をしてもらいます。

転職先が決まらない場合は、居住地の管轄税務署で確定申告する必要があります。

【住民税】

住民税は、前年の所得で計算された税額を,翌年の6月から翌々年の5月まで支払うことになるので、退職時に残額を一括で支払います。→前年の所得で計算された今年度の住民税を退職時に支払うのです。

退職した年の住民税は、後日納税通知書が届くので、翌年になってから自分で支払うことになります。

Ⅶ 会社に返すもの、受け取るもの

1 会社に返すもの

退職時に会社に返すものは、いろいろありますが、次のものは返却します。

・制服、業務上の印鑑
・社員証、社章
・名刺(取引先の名刺も含む)
・通勤定期券(会社支給の場合)
・貸与されたパソコン、文具や備品など
・業務上の書類など
・健康保険証

2 会社から受け取るもの

会社から受け取るものは、これからの転職活動や失業生活に必要なものが多いので、十分チェックしておきましょう。

・雇用保険被保険者証
・年金手帳
(会社で預かっている場合)
・源泉徴収票
・離職票
(転職先が決まっている場合は不要)

※ 
離職票と源泉徴収票の交付は退職後になることが多いので、発行日を聞いて自宅への郵送を頼んでおくとよいでしょう。

Ⅷ 退職金の受け取り

会社を退職する場合、気になるのは退職金のことです。
自分ははたして退職金をもらえるのか? もらえるなら、いくら位もらえるのか?

1 会社に退職金制度があるか

退職金をもらえるかどうかを知るには、会社の就業規則退職金規定を調べてみてください。
就業規則は、10名以上の従業員がいる事業所では作成が義務づけられています。そして、「退職金制度を設ける場合は就業規則に記載すること」と法定されています。

もし就業規則や退職金規定その他に、退職金について定めがない場合は、残念ながら退職金はもらえません。たとえどんなに長くその会社に勤めていようと退職金を請求する権利はないのです。

逆に、就業規則などに退職金の定めがあって、支払う場合の金額、時期、方法(一時金とか年金とか分割払いとか)とかが定められている場合は、それにしたがって支払いを受けることができます。

2 例外的な支給

例外的に、退職金規定が存在しない場合でも、一定の基準に基づく退職金算出方法で退職金を支給することが会社の確立した慣行となっているような場合には、退職金の支給は雇用契約の内容になっているから、会社は退職金を支払う義務があるとする裁判例があります(日本段ボール研究所事件)。

3 退職理由による退職金支給額

 退職金の支給額は、会社の退職金の規定により決まりますが、退職理由が「会社都合退職」や「定年退職」に比べて、「自己都合退職」では低めに設定されがちです
また、就職後1~2年で辞める場合、退職金を支給しない会社も多いのです。

なお。懲戒解雇では、懲戒事由によって支給されないか減額されたりします。

退職金は一般に金額が大きく、退職後の生活にもかかわるものなので、退職にあたってはよく調べるようにしてください。

Ⅸ 会社が退職妨害するとき~退職代行の利用も

ここまでは、おおむね円満退職することを前提に記事を書いてきました。円満退職できればそれに越したことはありません。
しかし、現実には会社側が、いろいろな理由から退職妨害してくるケースがあります。ここでは、その点について見ておきましょう。

1 人手不足とブラック企業の増加

人口減少と高齢化社会の到来で、日本の労働市場は人手不足が慢性化しています。そのため、会社を辞めたくても強引な引き留めにあって、簡単に会社を辞められない人が増えています。

加えてブラック企業の増加により、辞めると言ったとたん、脅しやパワハラ、暴力まがいの仕打ちを受けるという事例も多く見られます。その結果、仕事がつらいのに辞めるに辞められず、体調を崩したりメンタルをやられる人が少なくありません。

2 会社側の引き留め手口の多様化

会社側の従業員を辞めさせない手口も、多様化、巧妙化してきています。
例をあげると、

社長や上司に辞めたいと言ったとたん、怒鳴られたり暴力をふるわれたりしてパワハラを受け、こわくて辞められない

上司に退職願を提出しても、上司が握りつぶして人事部にまわさないなど、退職手続を進めようとしない
 
後任者が見つかるまで辞めてもらっては困ると言って、いつまでたっても辞めさせない

かつての仕事上のミスを持ち出してきて、「今辞めるんだったら、損害賠償を請求するぞ」と脅かす

些細なことを理由に「懲戒処分」をちらつかせて、退職させない

離職票・社会保険書類など、今後の転職や生活に必要な書類をくれない

退職にあたり、これまでの未払い賃金や残業代、立替金を払ってほしいが、会社は支払おうとしない

「引き継ぎをキチンとしないで会社に損害を与えたから、損害賠償を請求する」と脅される

など、会社側の退職妨害にはいろいろな手口があります。

3 退職で会社とトラブルの恐れがあれば、退職代行も検討

⑴ 労働者には「退職の自由」が認められています

すでに見たように、期間の定めのない雇用契約では、当事者はいつでも解約の申し出ができ、この場合、労働契約は2週間を経過すれば終了すると定められています(民法627条1項)。
ここの「期間の定めのない雇用契約」とは正社員の場合をさします。

先に、退職の申し出に関しては、円満退職をめざす場合は「退職願」を提出すると書きましたが、2週間の経過で退職の効力を発生させるためには「退職届」を提出するようにします。

上記のように会社が退職妨害してくるときは、「退職届」を特定記録郵便(インターネット上で配達状況が確認できる郵便)で送付して証拠を残します。
もっと確実に退職届の内容まで証拠を残したい場合は、ちょっと面倒ですが、配達証明付き内容証明郵便を使います。こうすれば、どういう退職届が会社にいつ届いたかの証明ができます。 

なお、期間の定めのある雇用契約(1年契約などのパートタイマ―等)の場合は、その期間中は原則として解約できませんが、やむを得ない事由があるとき(体調不良、親の介護の必要性など)は、直ちに解約できます。
この場合、その時から2週間の経過で労働契約は終了するとされています(民法628条)

 
先にⅢ章で、就業規則に「退職の申し出は退職の1か月前までに行わなければならない」と定められていたとしたら、1か月以上前に、直属の上司に退職したい意思を伝え、退職日を決めたうえで退職願を直属の上司に提出するとよいでしょう、と書きました。
しかし、これはあくまで円満退職する場合のことです。

会社側が退職を妨害してくる場合は、このような就業規則は無視していいのです。裁判例でも、就業規則より民法の2週間の規定が優先すると判断されていることは前述したとおりです。

会社側がこれらの「退職の自由」を妨害することは、違法行為にあたります。
退職に当たっては、これらの点をよく覚えておかれて、毅然と対応するようにしてください。

 ただし、会社側には顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家が付いていることも多く、一社員がこれらの法律問題などで会社側に立ち向かうことが難しい場合もあります。

たとえば、退職をめぐるトラブルが複雑な法律問題に発展しそうな場合や、どうしても残業代や未払い賃金を請求したい場合や、ご本人が心身の不調を起こしていて会社との退職交渉が難しい場合などです。

このような場合、ひとりで悩まず、費用はかかりますが、「退職代行サービス」を利用するのも一つの方法かと思います。
これが原因で身体をこわしたり、メンタルをやられてしまっては、これからの長い人生に取り返しのつかないマイナスになる可能性があるからです。退職代行を使えば、以後会社の人と顔を合わさずにすむ例も多く、精神的にもぐっと楽に退職できます。

 なお、注意点として、退職代行サービスに依頼する際は、民間企業の業者は避け、弁護士または労働組合を利用するようにしてください。

弁護士や労働組合の資格を持たない民間業者に頼むと、退職会社に対し代理交渉することができないので、かえって問題をこじらせることもあるからです。そればかりか、業者が弁護士しかできない非弁行為を行えば犯罪になるので、依頼者であるあなたまでがそのとばっちりを受ける恐れがあるのです。ただし、弁護士監修や顧問の業者の場合は弁護士の助言・指導があるのでその恐れはないでしょう。

一方、退職代行サービスが弁護士や労働組合の場合は、会社と代理交渉する権限があります。
この場合、専門家の法律的な対応で相手方を説得するので、退職会社のほうも自社側の落ち度を認めやすく、スムーズにことが運んで解決が速くなります。

費用はかかりますが、退職会社の出方如何やご本人の体調などによっては、退職代行の利用も検討に値すると思います。
なお、退職代行サービス利用の費用は、業者によって異なりますが、おおむね2万~5万円位が多いでしょう。ただ、弁護士による退職代行の場合は、やや高くなり5万以上のケースが多くみられます。 

それから、めったにないことですが、退職をめぐるトラブルが大きくなって「訴訟」にまで進む場合は、弁護士しか対応できませんので、その点理解しておいてください。

なお、退職代行利用以外の方法としては、労働基準監督署に、退職妨害にあっていることを相談することも可能でしょう。

以上、参考にされて、ぜひご希望通りのスムーズな退職を実現してください。

参考 退職代行サービスの詳細はこちら↓ 

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